創業者の心

某社の創業者が書いた「私の履歴書」的自費出版本(非売品)を読んだ。

社員全員と一部取引先に配布したらしい。豪華な装丁で400ページあったが、1時間半ほどで完読できた。内容は創業から今日までの歴史や企業運営のコンセプト、競合会社との闘争から最近のマスコミ報道に対する意見まで多岐にわたる。特に社員に対する思いを書いた章は強く印象に残った。記載内容の通りであるなら、誠に立派な企業経営者であるし、そこで働く社員は幸せであるに違いない。

しかし、残念ながらインターネットで検索すると、社員とおぼしき人達が書いたネガティブなスレッドが目に付く。また、マスコミもたびたびコンプライアンス違反報道している。この本に書かれた内容が嘘なのか、創業者の思いをねじ曲げて運営する人間が社内にいるのか。社員数2万人というから、「思い」が隅々まで伝わらなくても無理はない。創業者は伝えるために書いたのだという。

考えてみるとこれは経営者として勇気がいることだ。一般社員まで全員に配布したと言うから、もし直属の上司がこの本に書かれたコンセプトに反する指示を出してしまったら、「会長の言っていることと違う」と反論されてしまうだろう。組織運営ができなくなってしまう可能性がある。反面、自分の思いを文章にして告知するという手段はとても有効である。すべての社員に同じ価値観を提供できるし、印刷物として残ってしまうから後で訂正はできない。よほど確固たる考えがなければできないだろう。

少し、どころか大きくこの会社の見方が変わった一冊だった。

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三国志、読了

北方三国志を読み終えた。

5月から読み始めて全13巻を4ヶ月かかった。途中の感想文でも書いたけど、北方三国志は今まで読んだ吉川英治や柴田錬三郎と大きく違う。今、別巻となる「三国志読本」を読んでいるが、作者によると元としたのは「三国志正史」とのこと。ほとんどの三国志が「演義」を元にしているので、どうりで違うはずだ。正史は小説というより事実の羅列に近く、「桃園の誓い」などは出てこない。北方が他の作者の作品にとらわれず、独自の世界観を出したかったという意図が分かった。

これも「三国志読本」を読んで分かったのだが、北方の登場人物に対する想いは大体想像したとおり。曹操が一番好きで、劉備・張飛・呂布・周喩あたりがお気に入りで自分の解釈を随分入れている。関羽に対してはあまりにも世間にイメージがありすぎて、手を出せなかったとのこと。嫌っている訳じゃなかったんだと納得した。対談の中で自らの学生運動を引き合いに出し、孫権を「スターリニスト」、周喩を「トロツキニスト」比喩していたのが面白かった。ちなみに劉備は日本の天皇制史観の表現として書いたとのこと。

結局この北方三国志は「歴史ハードボイルド小説」であり、自作の水滸伝でもテーマとなる「男の滅びの美学」を書いたものだった。その意味では大変面白く読めたのだが、青年期に吉川英治や柴田錬三郎を読んでいた僕にとっては「三国志」として物足りない部分が多々あった。少し時間をおいてあちらを読んでみようと思う。北方三国志の再読はないかも。。

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三国志、その後

北方謙三「三国志」の単行本がようやく6巻目に入った。

曹操が華北を制圧し、南では孫権が父の敵の黄祖の首を獲り、北への足がかりを作ったところ。劉備はようやく諸葛亮孔明と出会い、「三顧の礼」で迎えることができた。ようやく「三国」の形が見えてきたところだ。

ここまで読んで思ったのだが、北方謙三はかなり登場人物に好き嫌いがあるようだ。「水滸伝」は一人一人を丁寧に取り上げて書いていたのであまり感じなかったが、「三国志」ではモロにそれが出ている。読者によっては自分の好悪と違っていたら違和感があるかもしれない。

多分好きだろうと思うのが、曹操、劉備、張飛。比べて関羽や孫権には少し冷たい。関羽と曹操のエピソードもあるにはあったが、とても淡々としていて吉川英治のようなケレンミが感じられなかった。これからどういう風に書かれているのかまだ分からないが、「関羽ファン」の僕としては不満タラタラである。

ハードボイルドタッチのセリフ回しや戦闘シーンの描写など、好きな部分もたくさんあるのだが、「三国志」としてはどうなのか。もう少し読んでみないとまだ結論が出せない。

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北方謙三の「三国志」

amazonのマーケットプレイスで中古本を買って読み始めた。

まだ、3巻の始め、劉備はせっかく譲ってもらった領土を捨て、5千の兵とともに流浪している。「三国」になるのはまだまだ先の話だ。ここまで読んでの感想は。。。ちょっと複雑かな。原作にとらわれず物語を再構成するという手法は水滸伝と同じだが、元々いい加減?な原作だった水滸伝に比べて、三国志は演義をベースとして過去に何度も小説化され、定番化している。僕も吉川英治版や柴田錬三郎版を何度も読んだが、どちらも面白く両者に違和感はなかった。

ところが北方三国志はあまりにセオリーを無視している。「桃園の誓い」のエピソードもなかったし、呂布が董卓を討つ場面も貂蝉が出てこない。その代わり、不細工で年上の嫁さんがキーとなっている。・・・うーん、ここまで壊されるとね。定番を知っているものとしては複雑だなぁ。。このままだと張飛の「長坂橋の戦い」や関羽と曹操のエピソード、趙雲が劉備の子を懐に抱いて脱出するシーンなんかも無くなってるのかな。

文体はハードボイルドタッチで僕好みだが、この先読み続けられるかちょっと心配。論理的に緻密に組み立てられた水滸伝に比べ、最初に取り組んだ大作ということもあってか、状況説明に筆が流れがちなのも気になる。果たして読了後の感想は。。。?

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北方水滸伝、読了!

北方謙三の「水滸伝」全19巻を読み終えた。

一昨年の秋から最初は毎月2冊、最近は1冊ずつ発売されて4月に最終刊の19巻が出た。僕は毎月amazonで予約して発売と同時に入手。プライオリティ一番で出張の行き帰りに読んだ。19巻というのは僕の蔵書の中では最長だ。1年半以上、楽しませてくれたことになる。

今さら本の内容について書いても仕方がない。歴史好き、ハードボイルド好き、大河ドラマ好きの人にはお薦めというより、絶対読むべき本である。19巻揃っていたら、2週間で読破してしまうかもしれない。それほど惹き込まれるし、集中できた。こんなのは高校生の時に読んだ「龍馬がゆく」以来だ。

さて、これからどうしよう。毎月の楽しみが無くなってしまった。本当なら現在刊行中の「楊令伝」へ行くところだが、まだ単行本のため経済性・携帯性が良くない。文庫になるまで、何を読むか。・・・といろいろ悩んだが、同じ北方謙三の「三国志」に決めた。これも好きな話で、今までに吉川英治版と柴田錬三郎版を何度も読み直している。定番中の定番だが、あの物語を北方謙三がどう料理してくれるのか。「水滸伝」を読み終えたばかりの僕としては期待いっぱいである。

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